ハッピー☆ウエディング
星空の下で


あたしはすぐ後ろに慶介を感じながら身動きがとれない。



いくら湯気で視界がぼやけていても、真後ろにいる慶介はしっかりと確認できるはず。





「温泉はいいな」




なんて言ってる慶介に答えられるわけもなく、ただこの状況に目眩さえ起こしそうになる。





「葵?」




慶介は、体を回してあたしの顔を覗き込んだ。




一瞬、2人の視線が絡み合ったけど、あたしは反射的に反らしてしまった。





慶介はそんなあたしの様子を見て楽しそうにニヤニヤ笑っている。





「星が綺麗だな」



「…………」




ダメッ!!


声も出ない!!!!





あたしの背中からは異様なほど
『ほっといて!!』
オーラが出てたに違いない。




慶介は、それがわかったのか、黙ったまま静かに、体をお湯にあずけているようだった。






「…………」


「……………」





気まずい沈黙が2人の間を流れる。


うんん。

きっと気まずいのはあたしだけで、慶介はなんとも思ってないんだ。


普通にしちゃえるくらいあたしはまだ子供なのかな……







あたしには、どれだけの時間がたったのかわからない。




あたしの全神経は、背中に集まってしまっている。




「葵さ……」



あたしはぎゅっと目を瞑る。





「ここ、男湯って知ってる?」



「………ええええっ!?」



< 74 / 337 >

この作品をシェア

pagetop