ハッピー☆ウエディング
星空の下で
あたしはすぐ後ろに慶介を感じながら身動きがとれない。
いくら湯気で視界がぼやけていても、真後ろにいる慶介はしっかりと確認できるはず。
「温泉はいいな」
なんて言ってる慶介に答えられるわけもなく、ただこの状況に目眩さえ起こしそうになる。
「葵?」
慶介は、体を回してあたしの顔を覗き込んだ。
一瞬、2人の視線が絡み合ったけど、あたしは反射的に反らしてしまった。
慶介はそんなあたしの様子を見て楽しそうにニヤニヤ笑っている。
「星が綺麗だな」
「…………」
ダメッ!!
声も出ない!!!!
あたしの背中からは異様なほど
『ほっといて!!』
オーラが出てたに違いない。
慶介は、それがわかったのか、黙ったまま静かに、体をお湯にあずけているようだった。
「…………」
「……………」
気まずい沈黙が2人の間を流れる。
うんん。
きっと気まずいのはあたしだけで、慶介はなんとも思ってないんだ。
普通にしちゃえるくらいあたしはまだ子供なのかな……
あたしには、どれだけの時間がたったのかわからない。
あたしの全神経は、背中に集まってしまっている。
「葵さ……」
あたしはぎゅっと目を瞑る。
「ここ、男湯って知ってる?」
「………ええええっ!?」