LOVERS♥HOLICK~年下ワンコと恋をして
「ばあちゃん亡くなって、引き取られた親父の家には、

 半分血の繋がった兄貴が二人と

 厳格な祖母が一人。

 この家にも母親という存在はいなかった。

 親父は子どもは作っても、結婚したことは無かった人なんだ。

 プレイボーイってもはや死語だけど、

 いい年してもそれを気取った人だった。

 あいつにとって、

 俺たち子どもって、犬猫のような、

 餌さえ与えときゃあいいようなそんな存在。

 兄貴たちも、僕も、

 いわゆる情愛なんてものは期待してはいなかったよ。

 強いて言うなら、

 僕は親父が嫌で

 絶対にああいう生き方はしたくないって思って生きて来たよ。

 けど、容姿は親父にそっくりで、鏡の前で、

 日に日にそっくりになってくる自分に怯えてたよ。


 祖母にとっては放蕩息子だったんだろうね。


 孫たちにはおやじみたいな人にはなって欲しくないって思ってか、

 けっこう厳しくしつけられたな。

 だからそれなりな人間には育っただろ?

 祖母には感謝してるよ。」


「おばあさんやお兄さんはどうしているの?」


「祖母はもう年でさ、

 老人ホームで穏やかに暮らしてるらしいよ。

 兄貴達は優秀で、それぞれもう独立してんだ。

 ああ、仲はそんな悪くは無いんだ、


 そうだね、今度紹介するよ。

 いい人たちだよ。」


「彗……」


私はそっと彗を抱きしめた。

彗が結婚に拘るのは、

お父さんの事もあるからなのかな。

愛情に飢えてるって言ったら語弊があるかもしれないけれど、

与えることにも、

与えられることにも憧れみたいなものを抱いているのかもしれないな。

「私、彗を大事にするから。



 だから……しあわせになろうね。」


彗はくすって笑って


「それは、なんとも期待しちゃいますよ。」


耳元で囁いてから

パクリと耳たぶにかじりついた。


「ぎゃっ、ば、ばかっ」

ふふふっ

彗は、私の反応を楽しむように悪戯そうに笑う。

この小悪魔わんこめ。

もうっ














 


  

 

 

 




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