LOVERS♥HOLICK~年下ワンコと恋をして
懐かしい場所だった。

母方の祖母が亡くなった時、

初めて親父に会った場所だ。

TVで見ていた顔と全く同じ顔が、

冷たい表情で俺を見ていた。

発せられた第一声は、今でも忘れられない。


「気持ち悪いな

 半分の遺伝子を持っているだけで、

ここまで似ているものなのか。」

そういうと、

俺の手をとり、

「俺がお前の親だ、

 だが、父親らしいことを期待するな。

 俺に愛情を求めるな。」

そう言って笑った。


あのときは緊張して意味が判らなかったが、

しばらくして、その意味が判ってきた。


親父は子どもに愛情などもてる人間ではないということ、

ただ、スキャンダルになるのを防ぐために

引き取って、監視したかっただけなのだということ。


田舎で、祖母と二人自由の中で生きていた俺にとって

監獄に入れられたのと同じような生活だった。

『気持ち悪い』

その言葉は俺の生涯忘れられないものになった。

この世の中で一番嫌いなもの。

それがこの顔

親父にそっくりな顔だ。



< 229 / 272 >

この作品をシェア

pagetop