LOVERS♥HOLICK~年下ワンコと恋をして
再びドアを開けた。


「彗…く」


「上着…」


「え?」


「上着部屋に忘れました。」


「あ、ああ持ってくるね。」


柊が部屋に向き直った瞬間

後ろからきゅっと抱きしめた。


「高木さん、ごめんなさい。

 僕、今、絶対しちゃいけないことしようとした。」


「しちゃいけないこと?」



「感情的になって、

 傷ついてる高木さんをもっと傷つけようとした。」



「何いって…」



「ストーカーのように、

 高木さんの事見つめてた僕を舐めないでください。

 あなたは今、

 ほとんど泣いてるじゃないですか。」

「泣いてなんか、いないわ。」


振り向いて視線を合わせた柊の頬を

両手でそっと挟んだ。


「涙が出なくても、人は泣くんですよ。


 ほら、僕が癒してあげる。」


彼女は嬉しそうに笑って俺の首元に顔をうずめた。

しばらくすると、

クスクスと笑いだし


「セラピー犬?」

そう呟いて

僕の髪をわしゃわしゃっとかき混ぜた。

「わ~高木さんやめてっ」


「ワンコのくせに生意気よ。」


「犬じゃないです。」



「彗。今日泊まっていってよ。」


「はい。」


僕は髪がぐしゃぐしゃされながら笑った。

戻ってきてよかった。

僕のプライドなんてこの際握りつぶせばいい。

たとえ犬扱いされてでも、
彼女を癒してやれたらそれでいい。

誰よりも彼女に近い存在になれるなら。

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