鉄の救世主Ⅱ(くろがねのメシアⅡ)
ゆっくりと階段を下り、小川分隊はホームに辿り着いた。

当然ながら電車を待つ乗客などいない。

暗闇の中、豊田のフラッシュライトだけが構内を照らす。

状況としては夜戦と同じだ。

人間は夜行性では無い為、暗闇の中での行動には不慣れである。

暗闇の中で視界を得る為には網膜の桿状体が機能する事が必要であり、これは暗闇に入ってから30分程度時間がかかる(日中明るい光に晒され続けた場合はより時間がかかる場合もある)。

桿状体は網膜の周縁部に集中的にある為に、夜間で視力を得る為には対象物から少し視点をずらして見るという特殊な物の見方をする必要がある。

移動においても、夜間は人間の感覚器官が鈍っている為に疲労が蓄積しやすく、また障害物の有無や位置が確認しにくく、誘導が困難な為に機動力が著しく低下する。

誘導方法は地図、コンパス、GPSなどを用いる点は日中と変わらないが、得られる情報が日中に比べて少ない為に意志決定や行動に時間がかかる。

暗視装置(ナイトビジョン)やGPSが非常に発達した現代においても、夜戦は実行部隊にとってストレスの溜まる任務であり、危険度の非常に高いものである事は古来から殆ど変わっていない。

それ故に、夜間の歩哨任務なども同様に緊張感を強いられる。

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