鉄の救世主Ⅱ(くろがねのメシアⅡ)
「どうして日本に来たの…?」

「……豊田も知っているだろう。俺の母国は貧富の差が激しくてな…国民が飢餓に喘いでいても軍部が食糧を独占して、国費は核実験やミサイル開発などの軍備増強に費やす…まともに血の通っている人間なら見ていられない。だから脱走した」

「でも…祖国(くに)にご家族は…?」

「軍事境界線を越える時に、非武装中立地帯を駆け抜けて地雷原を渡って…地雷を踏んだ父母が犠牲になった…両親に楽な暮らしをさせたくて脱走したのに、生き延びたのは俺だけだった…」

谷口が語ったのは、ならず者国家と言われる母国の現実。

スパイや工作員の侵入を定期的に監視しているが、地雷原を渡る亡命者も年間数人はいるという。

軍事境界線では銃撃戦が発生する事も数多く、1960年代から1980年代にかけては、ほぼ毎年死傷者を出してきた。

< 95 / 650 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop