ねえ、君にもし、もう一度会えたなら。
「『親愛なる卒業生の皆さん』」
「親愛?!出だしカッコつけ過ぎだろ。」
早速…いい反応。
「『卒業して10年。月日の経つのを本当に早いなあと実感しています。今、筆を執りながら…君たちの卒業アルバムを見ている所です。アラサーともなれば、家庭をもつ人もいるでしょう。仕事では中堅くらいになって…バリバリ後輩の指導にあたっている人もいることでしょう。(ちょっと想像がつきません。)本当は、会って詳しく話を聞きたかったのですが、叶わず…このような形で一方的に語らせてもらうこと、ひとつ許して貰えればと思います。さて、私は君達を卒業させてから、更に3回卒業生を送り出し、現在は2学年の主任として、教科指導や進路指導にあたっています。年々生徒達は精神的に弱くなって…難しい生徒が増えてきている気がします。今なら、君達のように、自由奔放な生徒がいても心穏やかに対処できそうな自分がいて…複雑です。(でも、君達は君達でなかなか大変であったことは自覚しておいて下さい) 同封した写真は、君達が私に施した…最後の悪戯といったところでしょうか。生徒や先生方が、勝手に所々から見つけて持ってきてくれるので…年々増えていくそれを、楽しんでいました。「おとといきやがれ」って…意味がよ~くわかった。…行きたかった!殴り込み!』」
先生…、覚えてたんだ……。
早瀬のあの台詞。
「『それから、写真が一枚足りないないことに気づくでしょう。みんなも見ればわかることではありますが……、もし犯人がお見えになったらシバいといて下さい。私からの仕返しです。むしろ行かせますので…後は頼みます。』」
………ん…?
「行かせる」……?
…………。
「『少々脱線はしましたが…、その写真を見て、昔を懐かしんでもらえたら嬉しいです。(でもちゃんと返せよ)。次回の同窓会を開催する時には、またぜひ声を掛けてください。(掛けろよ、コノヤロー!) 最後になりますが、クラス会の盛況と共に、君達の今後の活躍を祈っております。』」
…………………
「ふざけてるんだか、何だかなあ…。」
「嬉しいような、ムカつくような……?」
矢代先生らしい文面に。
みんな、少し懐かしんでいるかのように……笑みを漏らす。
その気持ちはわかる……。