ねえ、君にもし、もう一度会えたなら。
「……早瀬って…、何考えてるかわからない。だいたい、今まで連絡とれなかったのに…、何でここにいるの?」
「大阪に引っ越して…携帯をソッコー水没させちゃって。防水きいてないから、当時ならデータは全部パーだろ?」
「……………。」
「けど、大学でも部活してたし、バイトもして忙しかったのもあって……。携帯自体いらなかった。ない時代のこと考えたら大して不便でもなかったよ。実家に電話もあるしね。しばらく…、持ってすらいなかった。」
「…………。」
「……それに。元々…ここには実家はない。だから、もうここに帰ってくることはないとわかってた。無駄な期待は…したくなかった。」
「……………。」
「……でも、たまに…思い出してた。嫌でも、思い出す。」
「…………。」
「高校教師になんてなんなきゃ良かったのに…なのに、辞めたいとか到底思えないのは、10年前の…自分の想いがあったから。馬鹿ばっかした仲間に、矢代先生。それに……紗羽ちゃん。生徒達を見る度に…思い出してた。」
「……………。」
「あの頃が…一番楽しかったって思うようになって、同時に、全てを手放したことを…後悔した。何もしないで、ただ笑ってただけの自分にも…頭にきた。知ってた?紗羽ちゃん。…俺ね、今……ウチの高校で働いてんの。」
「……え……?」
「……去年からね。」
「……嘘……。」
「同窓会の知らせは俺には来なかったけど……、矢代先生から教えてもらった。正直、来ていいものか悩んだけど……。幹事に紗羽ちゃんの名前があって。これって先生が言ってたそのタイミングじゃないかって…思ったんだ。」
「……だから、先生…」」
『行かせる』、だなんて…書けたんだ。
「こっちにいること、誰にも知らせようがなかったけど、利央には偶然コンビニで会ってしゃべったから…利央は知ってる。」
利央が………?
彼女はにやにやとしながら……コクリ、と頷いた。
「あと、案内状見て、しんちゃんとは…連絡とってた。」
「……ええ?!」
「昔のお返しに、宣戦布告してやったけどね。」
「……なんで私には連絡くれなかったの?」