ねえ、君にもし、もう一度会えたなら。








『別れがあれば、出会いもある』。




幼ごころに身についた考えは…




青春時代までにも纏わり付いたまま…、変わることはない。




親の仕事の転勤で、まるで…全国行脚。


人生は、一期一会。



人との関わりさえも、気楽に……



思うがままに、


自分が楽しければ何もかも許されるかのように。



自由気ままに…生きる。









「え~、A判定?すげーな、お前。いつ勉強してんだよ。」




机の上に広げた全国模試の結果。



いつの間にやら見られたのか…



前の席の男…、浅沼真哉に、



ある日…そう言われた。






「なんでもそつなく熟すよなあ、早瀬って。ずりーなあ…。その要領の良さ、分けてくれ。」




決して嫌味なんかじゃなくて、


切実な思いなのだろうと思えるのは……。


ここが、進学を目的とする特進科のクラスであって。

皆の進路も…、既に決まりつつある、高2の夏頃の話であったから。




「………。違う違う。俺、めちゃ勉強してるし。」



「嘘こけ!だったら教科書くらい持ち帰れやボケぇ。」



「……バレてたか。」





どうやら、他人から見た自分は、そういうイメージらしい。




これこそが、客観視された…自分。





別に生き急ぐ訳ではないけれど、



思うがままに行動する俺に対して…



他人が評価する「俺」は、自分が思っている自分とそっくりそのまま……。






そうであると、疑いもしなかった。










< 114 / 457 >

この作品をシェア

pagetop