ねえ、君にもし、もう一度会えたなら。
道路の向こう側から……
着信音が流れて来る。
「……………。」
その曲が、
10年前の…私の着メロと同じ、
大好きだったモンパチの…
『小さな恋のうた』だってことに…今更ながら気づく。
早瀬はスマフォの画面を見て。
それから……
顔をあげて、真っ直ぐに……、私を見つめる。
早瀬の口元が動いて。
『もしもし。』
声が……
その動きに沿うようにして、耳元に届いた。
「……早瀬。」
『………。何してんの…、紗羽ちゃん。』
「……うん…。」
『目の前にいるのに…通話代勿体ないじゃん。』
「うん……。」
『………?紗羽ちゃん…?』
繋がった。
10年ぶりに…
繋がった。
『めちゃくちゃ照れるんだけど。顔見ながら…電話って。』
「……。見えないより、全然いい。」
『嫌だよ、ごまかせないし。』
「ごまかすようなことが…あるの?」
『あるよ。』
「………。何…?」
『……………。』
早瀬は、途端に背を向けて。
低い、穏やかな声が…
耳から、全身へと駆け巡るようにして…響いた。
『嬉しい。』
「…………。」
『…信号が青だったら、紗羽ちゃん所に…抱きつきに行ったかも。』
そこで…
通話は途切れた。
赤の点滅。
赤に染まった早瀬の頬と…、
キュっと上がった口角。
屈託ない笑顔を向けて……
彼は、私に手を振る。