ねえ、君にもし、もう一度会えたなら。
帽子を被って。
首からは…水筒を下げて。
まるで遠足に行くような格好をして、外へ出る。
蝉の声と、
日差しの眩しさは…
まだまだ夏の名残りを残していて、
半袖から覗く自分の腕の黒さが……
より、それを強く感じさせた。
男女1列に並ばせて、隣りどうし…手を繋ぐ。
しっかり者の女の子と、チョロまつ君。背の順に並ぶけれど、少々ペアを入れ代えるのは…保育者の、ちょっとした配慮。
幼稚園を出て、
高校の…門をくぐる。
校舎に沿って…歩きながら、
「お兄ちゃん達、お勉強してるから…シー…、だよ?」
人差し指を鼻にあてて、子供達へとジェスチャーしていると。
「わあ~、かーわいい♪」
「ばいばーい!」
黄色い声が、頭上から降ってきた。
見上げると……
女子高生が二人、2階の教室の窓から、身を乗り出して…
こちらに手を降っていた。
無邪気に手を降り返す…子供達。
「………。休み時間だったか…。」
そう言えば昔、私達も……ああやって、幼稚園児に手を振ったっけ。
あの時、軽く会釈だけして、後は気恥ずかしそうに視線を逸ら続けた先生の気持ちが…今ならわかる…。
高校生というお年頃な年代の人に…、最も関わりのない世代の人に、注目を受けることなんて……
まず、ないことだから。
当然の如く、私も…
黄色い声の中を、子供達にだけ視線を送って…
やり過ごそうとする。
なのに……、だ。
「ホントだ。かーわいい。」
聞き覚えのある低い声に。
思わず……顔を見上げる。