ねえ、君にもし、もう一度会えたなら。
つい…
足を止めてしまった。
「………早瀬…。」
先程の女子高生のとなりで、早瀬が…
こっちを見下ろしている。
あの、再会の日から……
番号を交換してから、
1度だって連絡を取り合ってなくて。
だけど、不思議と不安とかは……なくて。
それは、忙しく日々が過ぎるのと…
『だって俺ら、一番近くにいるもん。』
そんな……早瀬の言葉が、そうさせていたのかもしれない。
……が、
彼はやはり…一枚上手だった。
「可愛い、エプロン姿。やっぱ似合うね。」
「…………?!」
公共の面前で……
平然と、言ってのけた。
唖然とする私と……
「えーじ先生、何がカワイイって?」
彼の元に…わらわらと集まってくる生徒達。
ブルーのシャツの男子生徒に囲まれた、早瀬のYシャツも……爽やかな、青。
「ヤメロー、落ちるっての!!」
覆い被さるように、じゃれて来る生徒達の中で…違和感がひとつもない。
人が集まる場所に…早瀬在り。
今も昔も…変わってないんだ。
「公開ナンパ?!」
「違うっつーの、同級生なんだよっ!」
アハハ、言い訳してるし……。
「紗羽センセー、助けて~!」
「男っていう生き物は……全くいつまでたってもコドモなんだから。」
助けて、だなんて……3歳児か。
「今何か言ったー?!」
「……。いーえ、何でも!」
早瀬から、「先生」って呼ばれるの…
こそばゆい。
「………。お散歩~?天気いーもんね。」
「うん、暑すぎ!」
「こっちは涼しーよ!」
「……ずるい。」
「なんと…冷暖房完備♪」
いししっと、早瀬が自慢気に笑った所で…。
「あちー……。この教室、暑くね?」
生徒の一人が、手でパタパタと…扇ぎ始める。
「ホントだ、あちーわ。」
次第にその輪が広がって。
早瀬以外の全員が……扇いでいる。
「……?少し窓開けたくらいで情けねーな、クーラー病かよ。」
勘のいい早瀬が…まだ、気づいていない?
明らかに今、私達…からかわれているのに。
「……グラウンド、見せて下さいね。じゃあ…、失礼します。」
私は、軽く会釈して……
また、歩き出す。
こんなくすぐったさは……久しぶりだ。
つい……錯覚しそうになった。
制服姿の高校生に混じって…
自分もあたかも、ここの生徒であるかのように。