ねえ、君にもし、もう一度会えたなら。
「ここまで準備したのに、コレ、どーなんの?!」
「……今更延期も…難しいかも!連絡網回すには、時間も遅いし…、なにより、明日こそ降水確率90%らしいし。」
「……そっか、なら…頑張んないとなー、ちびっこたち!……紗羽ちゃん、そこ持ってスピーカーに被せて。」
両端を持って、二人で…スピーカーへとビニールを被せる。
「次は…、アッチ!」
「はいっ!」
考える…暇はない。
クルクルと動き回る早瀬。
君の側にいると、私は悩んでいる暇もなくて…
その時に、夢中になる。
悩む時間が勿体ないって…思ってしまうんだ。
「……早瀬、髪の毛ペチャンコー!」
「うん。もうパンツまでぐちゃぐちゃ。」
「これ、大変な運動会になるよね。」
「……そっか~?最高の運動会になるんじゃん?」
「……え?」
「二度とない、忘れられない…思い出になるよ、きっと。逆境を楽しめるようにするには……先生の、力量が問われるけどな。」
「…………。」
早瀬の…前向きなところが…好き。
めんどくさいことだって、ケロッとこなしちゃうのは。それこそ……この人の、力量だったんだ。
「……早瀬ー…、」
「……なに~?」
「怒ってないからね、私…。」
「………。知ってるよ。」
「……ごめん、変な態度とって。」
「謝るくらいなら、しなきゃいーのに。バッカだなあ、紗羽ちゃんは。」
「………。」
「大概素直じゃないよねー。…意地っ張りだし。」
「……どーせ……。」
「……そーゆーの、崩せるのが…俺の特権かなって思ってる。」
「え…?」
「……お…。あっちの空に、晴れ間が!」
「…………。」
「やっぱ、運動会は…快晴が一番かな。」
雲の隙間から、合間見える…青。
うん……、できれば今日、早瀬がそんな空の下で笑うのを…見てみたかった。
太陽みたいに眩しくて、
直視なんてできなくなるかもしれないけど…。
君にはやっぱり、青が似合う。
「……。さっきの言葉、感動したのに…。」
「アハハ、撤回はしないよ!…どしっとした心構えさえ持ってれば…焦りもなくなるし。」
「……なるほど……。」
心の中のモヤモヤを……一気に晴らしてしまった。
心構え…か。
私に足りないのは……そういうところなのかもしれない。
相手の気持ちばかり気にして、自分は…ふわふわ。
流されるばかりでは…駄目なんだ。