ねえ、君にもし、もう一度会えたなら。



私は、ゴールラインに立って…



子供達の、バトンパスの応対係。


職員や、役員がコーナーを囲んで。



ピストルが……鳴った。







強い雨。


妨げる視界をものともせずに……子供達は、駆けて行く。


泥を弾いて、

力強く……。



見据えているのは、友達が待つ…ゴールだけ。



気持ちが全面に出て、なんメートルも先から…手を伸ばして走る子もあった。





練習では、いつも同じクラスが勝っていて。

だけど、子供達の気持ちは…次へと向かっている。



「今度は勝つ!!」


そう言って、

新聞紙で作ったバトンを持って…毎朝ホールでリレーごっこをする子もいた。






勝っても負けても…全力投球。

それが、こらから生きていく上での…力になる。








1位のクラスは、相変わらずダントツで……


最終走者へと、バトンを繋ぐ。




保護者や先生達の応援の渦の中…


アンカー達は、ゴールテープへと向かうけれど。



最後のコーナリング…。


ぬかるんだ地面に足を取られて……


1位を走っていた子が、転んでしまう。





「立てっ!!」


大きな…声。



転んだ男の子は、その声の主を確認する素振りも見せずに、すぐさま立ち上がると……

真っ黒になった手足を、必死に動かし始めた。









彼がゴールに入ったのは……一番最後。



友達の背中を見たことがなかったその子は、

呆然として……



ゴールに立ち尽くしていた。





担任の先生が、彼を抱き締めて…

今にもこぼれそうな涙を…堪えていた。





ドラマが……あった。



思うようにいかないことだってある。

頑張りが実を結ばないことだってある。


だけど……、仲間のために、自分のために、全力を尽くして。


悔しさを感じることができるならば……



必ず、その子の力に…変わるのだ。






< 190 / 457 >

この作品をシェア

pagetop