ねえ、君にもし、もう一度会えたなら。
「うわああ~ん!!いかないっ!!ママ~ッ!」
ふっくらとした頬っぺたが、みるみるうちに…赤く染まる。
「今日からしばらく、慣らし保育で…11時にお迎えお願いします。」
「わかりましたー!あ、紗羽先生、持ち物におしぼりって書いてあったけど…それって濡らさなくていいの?」
娘の、必死の訴えにも動じることなく、同じくふっくらほっぺの母親は……
私にこそっと、耳打ちしてきた。
「家で濡らしたものを持たせ下さいネ。今日は、こっそり…私がしておきます。」
「ごめん、手紙斜め読みしてた…。なんか他にも不備があったら教えてね。」
こちらの新入園児の名前は、佐田未來ちゃん……
母親は…
佐田美那子。
そう…、みっちゃんの娘…未來ちゃんは、
とうとう観念したのか…私にしがみつくようにして、しっかりと抱きついていた。
「すごいやんちゃだから…何かしたら、ガツンと叱って貰っていいので!…じゃあ、紗羽先生、宜しくお願いします!」
「はい!」
目で「よろしくね」と合図するみっちゃんに…、私は、大きく頷いて。
胸元で小さく…手を振る。
まるでコアラにみたいに…だっこしながらすすり泣く未來ちゃんに、後ろ髪ひかれる様子もなく、さっさと園を後にできる彼女は……おっとりとした「友人」のみっちゃんのイメージとは、また…違う。
「任せたよ」と、園に信頼を置いて預けてくれたのか、はたまた今の保護者の現状を…私が少し話していたことを踏まえての行動なのかは解らないけれど…。
心配のあまり、玄関先に張り付くようにして、なかなか子離れできない母親が増えている中で…
ある意味、肝が据わっている。
2児を育てる…母親の顔。
意外な…一面。