ねえ、君にもし、もう一度会えたなら。
「しんちゃんは?今何の仕事してるの?」
何かが…ずっと。
引っ掛かる。
話題を変えて…、カラカラとストローで氷を転がす。
…落ち着かない。
「俺~?香料を製造する会社。」
「香料……。…って、幅広いね。食品とか?」
「…あ~…、色々!例えばシャンプーだったり、お菓子だったり……。」
「……へぇ…!」
「…紗羽ちゃんが使ってたシャンプーの香料も扱ってるよ。」
…………。
「…………はい?」
なんですと?
「高校の時、紗羽ちゃんがすれ違うと超いい香りがしてさ……」
「……………?」
「男子連中でよく匂ってたよ。」
「………さ…、最低っ、そんなコトしてたの?!」
「健全な高校男児だぞ~?」
「……信じらんない!てか、何使ってたのかも覚えてないし。……ん?けど、何で?何でしんちゃんが知ってるの?」
「………。覚えてない?」
……覚えてないよ、そんな古い記憶。
「聞かれただろ~?早瀬に。」
「…………。『早瀬』…?」
「『早瀬映志』。紗羽ちゃん、さりげに仲良かったじゃん?」
早瀬…映志。
「……そうだっけ?」
「そうだよ。あん時こいつヤキモキしてたんだから。早瀬があまりにも紗羽ちゃんにちょっかい出すもんだから。」
「おまっ…、余計なことを!」
「……時効時効♪」
しんちゃんたちのやりとりをよそに……
私は、記憶の回路を辿り始める。
パズルのピースが…
すべて埋まっていくような感覚。
早瀬映志は……
気がつくと、いつもすぐ側にいた。
しんちゃん達みたいに、つるんで親しくするような仲とまでは…いかなかったけれど……。
ふと…気づくと、隣りいる。
空気のようでいて…掴み所のない、不思議な人だった。