ねえ、君にもし、もう一度会えたなら。
゜·∴。°·∵。゜·∴。
「髪、さらさら。」
「……は?」
「紗羽ちゃん、シャンプーなに使ってるの?」
「え…、〇〇〇だけど。」
「ふーん。俺もソレ使ったらサラサラになると思う?」
「………。まずはトリートメントから始めようか。」
同じ高さの目線。
同じ…背丈。
彼の、栗色だったやわらかそうな髪が真っ黒になっていた…
高3の秋。
傷んだ髪を指で摘んで…
早瀬は、私に…そう聞いてきた。
たったそれだけの…会話。
さらさらになりたいのか?
当時はそんなことを…思っていたのかもしれない。
ただ、いつもいつでも…
彼とは嫌でも視線がぶつかるから、
きっと私の方が…
先に視線を逸らしたのだろう。
「ふーん…、ありがと。」
早瀬はその後、言葉を続けるでもなく…
さっさと友達の輪の中へと戻っていった。
そんな…気がする。
記憶は……
曖昧。
シャンプーの名前も思い出せない。
だけど………、
悪戯っコみたいに見つめてくる彼の瞳と、笑うと口角がキュッと上がるその瞬間だけは……
ハッキリと、覚えてる。
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