ねえ、君にもし、もう一度会えたなら。


「……紗羽ちゃん。」


「何…?」



「俺は、初恋の相手だったと?」



「……う、うん。」



「ふーん…、初恋ねえ…。」



…………。



「あのね、紗羽ちゃんが知ってる俺も、好きだと思ってた俺も、もうここには…居ないんだよね。」



「………?」



「……ってことで、今の告白はノーカウントで。」



「……ええっ?!ノーカウントって!」



「だって、10年前の俺に今更告白したってしょーがないでしょ?」



「…………。」



「言ったじゃん、それなりの覚悟があったらいーけどって。」




覚悟があったから、追いかけたのに?



「彼氏が離れてるから、目の前に現れた初恋の相手に…つい、ふらりと気持ちが揺らいだだけかもよー?」



「……違……」



「言い切れないでしょ?だって、彼氏と会ってもいないのに。」



「……………。」




「だから…、会って来いよ。会って、話してみて。それからじゃないの?…新しい関係になるなら。偽善者の殻…ぶち破ってさ。」



新しい…関係?




「少なくても…、あっちの気持ちはまだ続いてるんだ。終わってなんて…ない。その気持ちは、痛いくらいわかる。俺がいい例。……って、さっきと言ってること違うか。支離滅裂?…まあ、いっかー。」



「……ズルいよ、早瀬。これでも必死に…」


……追いかけて来たのに。



「……うん。でも、こんな俺でも好きだって言われたら。俺なんて簡単に…堕ちるよ?」


「…………!」



「……今の俺は、こんな俺。10年先もこーなんかはしんないけど。けど、まあ…紗羽ちゃん、案外頑固だし、そーゆーの言葉にするの苦手でしょー?だから、期待はしない。」




期待はしない。って、言葉にされると…

まるで、期待してるって言われたみたいだ。




「……あまのじゃく…。」


「あはは、そーかも。だって、独占欲強いし、好きな人には自分だけ見てて欲しいから…つい、意地悪したくもなる。……やめたいのなら、今のうちに。」






ズルい…。


そうやって可愛い顔して笑って。



そっちこそ、私を…掌の上で、転がすんだ。




「……わかった。さっきの告白も、キスも、ノーカウントでいいです。」



「へ?…いやいや、キスはさすがにねえ?」



「通りすがりの猫だったと思うようにする。」



「……猫って…、うおいっ、気まぐれ扱いか!」




「簡単には靡かない私が、好きなんでしょう?」




「……………。………おう。」




「じゃあ、こーゆー私も、アリなんじゃない?」




君は大きく目を見開いて、

じっと…私を見る。








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