ねえ、君にもし、もう一度会えたなら。
「……駄目だって、言ってるのに…。」
早瀬は、私の腕をとって。また、私を…包み込む。
どのくらい…そうしていただろうか。
「……帰ろう。でなきゃ…俺、紗羽ちゃんをちゃんと送り出せなくなる。」
不意に離れた…君の。
月明かりを宿した…妖艶な瞳が。
小さくカタチを変えて…笑っていた。
それから、
宿につくまで…一言も話すことなく。
冷たくなった手を…温め合うように。
手を繋いで…歩いた。
空からは……小さな雪の粒。
早瀬が奏でる下駄の音が…
沈黙を、
この…静寂を、破っていた。
玄関口で、お互いの頭についた雪を…そっと、払った。
「…ねえ…、二次会には…行くの?」
「……紗羽ちゃんは?」
「私は…、いかなきゃ。」
「……そう。じゃあ、俺は…行かない。」
「……うん。……じゃあ…、サッカー…頑張って。」
「ありがとう。……お休み。」
「おやすみなさい。」
早瀬がいない二次会で……
私は一体、どんな顔をしていただろう。
切なくて、
苦しくて、
胸が…痛くて。
それをごまかすようにして…お酒に走ったことまでは…覚えている。
翌朝、目を覚まして。
カーテンを開けると…。
雪が太陽に反射して…キラキラしていた。
途絶えた…記憶。
夕べの何処からが…夢だったのかっておもったけれど。
手に、早瀬の冷たい手の感触が…
まだ、残っていた。