ねえ、君にもし、もう一度会えたなら。
「……紗羽ちゃん!」
「……え?」
新幹線が、目の前を通過して…。
ふわりと、風が…掠めていった。
いよいよ、幻聴まで…聞こえてきたのか?
ホームを見渡しても。
君らしき人は…何処にもいるはずもなく。
やがて止まったそれの、開かれた扉の内側へと…足を、踏み入れた。
自由席へと移動して、座れる場所はなかと…
キョロキョロしながら、通路を歩く。
「すみません、隣り…空いてますか?」
中年男性の隣りに…運良く空席を見つけて、腰を降ろす。
東京までは、2時間以上の時間を要するから、暇潰しにと…持ってきた小説のページを、パラパラと…捲った。
「あの……。」
「…はい?」
隣りのおじさんに、肩を叩かれて…そちらへと振り返る。
「……あなたじゃないですか?」
「……え?」
おじさんの視線は、窓の外へと向けられて…。
それを追うように、私も…視線を移してみると……。
「………は?」
今度は…幻覚だろうか?
そこには、早瀬の姿があって……。
おじさんに対してのものなのか、「ありがとう」と言うように…
両手をつき合わせて、ジェスチャーをしていた。
きっと、ここまで…走ってきたのだろう。
膝に手を置いて、肩をじょうげさせる姿に…。
こっちにまで、君のリアルな息遣いが…聴こえて来そうだった。
あの時の私と…同じ。
何か言いたげな顔してるのに。
ただ、こちらを見つめたまま。
「……早瀬……?なんで…?」
真剣な面持ち…。
けれど、その顔はふわりと…緩んで。
目元が、優しい三日月のカタチを…描く。
なぜ、君が今…
ここにいるのか。
これが、偶然だなんて…誰が思えようか。
会う気にならなければ…、会えないんでしょう?
ならば、君は…
私に会いに来た。
何かを…、伝えるために。
きっと、あの二人のどちらかが…
お節介したのだろう。
でなければ、
ここにいるはずも…ないのだ。
早瀬の口が…ゆっくりと、言葉を綴る。