ねえ、君にもし、もう一度会えたなら。
同僚と酒を飲んで。
タクシーを飛ばして帰って来たのは…午前様。
数時間後にはもう、会社に行かなきゃあならない、ぐでぐでの…リーマンだ。
千鳥足で、アパートの入口へと歩いて。
いつものように…
郵便受けから、郵便物を…物色する。
「……。……あれ?水道代督促状来てるし…。」
男独りの生活は、
かなりの…ルーズさを持ち合わせていて。
誰にも干渉されたくない、リアルな生活ぶりが…ここぞとばかりに露呈される。
「………。……クリーニング、20%オフ、か…。スーツ、出しとこっかな…。」
リーマン兼、主婦。
誰も待つことのない部屋の前へと…たどり着いて。
ここで、ドアを開けたら。
『お帰りー!』って、美味しそうな夕飯の匂いと共に、奥さんの笑顔があったらなあ……、と、夢をみたのは…随分と昔の話。
鍵を開けながら、最後の郵便物に…目を落とす。
「………あ。」
真っ先に飛び込んで来たのは…
稲守紗羽。
君の…名前。
けれど、その名の上には。
セットになってるような…
ヤツの名前。
『早瀬映志』。
「………。ちきしょー…、やりやがったな?」
助けは要らないと言っておきながら。
ちゃっかり…二人で幹事かよ!
そうと信じて…疑うはずもなく、
いとも簡単に出し抜かれた自分に…嫌気が差した。
折角、大酒飲んで…
イライラを払拭させたのに。
見事な…振り返し。
玄関の内側に入ると、鍵をぽいっと…放り投げて。
靴を…脱ぎ捨てて。
さっさと部屋へと…入って行った。