ねえ、君にもし、もう一度会えたなら。
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「……なあ……。」
「……んー?」
珍しく、夏期講習に参加していたアイツが…。
ボンヤリと窓の外を見つめて。
妙に……アンニュイになっていた、高校3年の…夏。
「……ここからグラウンドって…遠いよね。」
「……?そーだな。」
その、視線の先は…何かを見ているようで…そうでもない。
ただ、宙を眺めてる…
そういった印象だった。
「ねえ。」
「……。なんだよ。」
不気味なくらいに…静かだった。
「紗羽ちゃんって、付き合ってるヤツ…いるの?」
何で、そんなの…俺に?
本人に聞けよ。
「……いないはず。」
「……じゃーさ、好きなヤツは?」
「………。……そんなの……」
こっちが知りたい。
「………。そんなの、知るわけないだろ。」
「……。だよなあ……。」
やつは、ふうーっと大きく息をついて。
俺の方へと…振り返った。
目線は…遥か下なのに。
見上げるその目が…ヤケに挑戦的にも見えた。
挑発に…乗ってはいけない。
分かっているのに。
俺のちっちゃなプライドは…驚くくらいに脆い。
「紗羽ちゃんを好きなヤツなら…いるよ。」
………言って…しまった。
どう反応に出るかと…、手に汗を握って。
次のアクションを…待つ。
「………。だろうね。可愛いもんなあ…。」
予想していたのと…違う返し。
むしろ、ヤツは…気づいていない?
ほら、目の前に…いるだろ?
ここだよ、ここ!
目で訴えるけれど……。
まるで…眼中にナシ。
これには……ウッカリ、苛ついてしまった。
「……ここにも、いる。」
「…………。……は?」
「ずっと好きで…、高1ん時に一度告白して…振られてるんだ。」
「……………。……それは…、前の話だろ。」
「………違う。いまだって…」
「………。じゃーなに?なんでみっちゃんと付き合ってるの?好きな女の…親友だろ?」
「……………。」
「紗羽ちゃんも、忘れた訳じゃないだろうに…、何を呑気に応援してんだよ。都合よくない、それ。」
「……………。」
ごもっとも…、だった。
俺のことはともかくとして。
彼女は…何も悪くないのに。
なのに、俺は…
フォローしなかった。
できなかったと言う方が…正確だろうけど。
少なくとも、彼女に好意を寄せているこいつを…ほんの少しでいいから、遠ざけたかったんだ。
自信がなくて…ちっちゃな自分。
ものすごい勢いで、彼女との距離を縮めるヤツが…脅威だった。
早瀬は、俺にも彼女にも…さぞ呆れただろうと思いきや。
至って真面目な顔して…こう言ったんだ。
「………。全部、過去だろ?問題は、そこじゃない。紗羽ちゃんの気持ちって訳だ。」
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