ねえ、君にもし、もう一度会えたなら。
「幸せ太り?」
「ちょっ…、失礼な。」
「嘘うそ、ジョーダン。」
あったかい瞳で…笑うんだな…。
君はまた、視線を前に移して。
外を…眺める。
静かな住宅街。
狭い道を通る車はほとんどなく……、かわりに、学校帰りの中高生がなん組かが…
自転車に乗って、通り過ぎていった。
「思い出すなあ―…。」
君が…、ポツリと呟く。
さっきの私と、全く同じ台詞で――。
「…何を?」
「……そのドアを開けてるとさ、色んな音が聞こえてくるんだ。車が通る音…、人の声。蝉はうるさいし…、それから――…」
「『それから』?」
「自転車が止まる音。」
「……………。」
「誰かさんがいつ気づくかなあって、こっから…見下ろしてたっけ。」
「……それって……。」
「ってか、声掛けるまで全っ然気づかなかったけどな。」
君が見つめていたのは。
あの日……。
私と同じように、若かりし自分達の―…遠い、記憶。
「……よし。」
「……ん?」
突然。
思い立ったかのようにして。
君は…手すりを軽く手打ちした。
「アイス買いに行こ。」
「へ?」
「自転車の鍵、どこにやたっけかなあ……。」
「自転車で行くの?」
「ん。そうだ、二人乗りしちゃう?」
「交通違反です。」
「今さら?よく言うよなあー、俺ら、共犯じゃん。あ。でも重たくなったから…ムリかも。」
「コラ。」
私は、無防備になっている君の脇腹を肘でつついて…
それから。怯んだ隙に…手を、すくい取る。
一瞬だけ、驚いた顔…。
「時間あるんでしょう?なら、歩いてこ。」
「……………。」
指を絡めて、ぎゅっとひと握りすると…
「紗羽ってこーゆーの出来る人だっけ。」
ニッと笑って…、今度は、君の手に力がこもる。
「隙アリ。」
がら空きになった私の脇腹を…思いきりくすぐって、小さな駆け引きは…またしても、君に分配があがる。