ねえ、君にもし、もう一度会えたなら。
共有しているのは。
二人の…思い出ばかりじゃあない。
今、ここに居る。
一緒にいる、そんな時間が。
ただ、嬉しい。
夏の――…昼下がり。
握った君の手が、少し汗ばんでいるのが…
愛おしく思った。
―――…と、
キャンっとひと鳴き。
ブルーの……声。
早瀬のサンダルにかじりつくブルーに。
君は…クスッと笑った。
「ごめん。忘れてたワケじゃないよ?」
君のあったかい瞳は、
一人と…一匹のもの。
「じゃー、ブルー。帰って来るまでいい子にしてろよー?」
早瀬はブルーを抱き上げて、リビングに置かれたゲージの中へと、そっと下ろした。
「早瀬。」
「んー?」
「二人と一匹でも、変わらないよ。のんびり、行こう。」
「――……。……だな。」
再びのびた…君の手は。
まるで、ブルーを撫でるみたいにして。
私の髪を……掻き乱す。
それから……、
おまけみたいにして、軽ーくキスを落とすから。
私は、借りてきた猫のように…なされるがまま。
反撃の狼煙も…上げられやしない。
「あ!!」
………?!
「な、なに?」
「コーヒー。どこに置いてんだよ。」
「え。いや、丁度いいのがソコにあったから…。」
「………紗羽の…あほ~…。」
「はあ~?」
さっきまでの、甘い時間は…何処に行ったのか?
君は、眉間にシワを寄せて。
恨めしそうに…私を見ている。
「ちゃんと中身確認した?」
「早瀬の荷物?中、ビッシリ入って固いから、カップ置いても安定してるでしょ?」
「………実用性重視する心意気はいいけどね…。」
「……え。何かまずかった?」
「……写真。」
「え。」
「その中には、写真入ってんの。」
「………………。」
「……バーカっ。」
君はカップを手に持って、ぐびーっとソレをひと飲みすると…。
「どの写真かざろーか、見てたんだよ。」
くるっと背中を向けて…呟いた。
……なるほど。
だからいつまで経っても…片付かなかったんだね。
「『バカ』はどっち。でも……、ごめん。」
こっちを見ないのは。
君の…、照れ隠し。
大切に、してくれているんだね。