ねえ、君にもし、もう一度会えたなら。



青く、突き上げるように――…高い空。


風にパタパタと仰がれる、万国旗。



絶好の…



運動会日和。









晴天の空の下。
母校のグラウンドの真ん中に、私は…立っていた。





「お疲れ様です」と、互いに挨拶を交わしながら、保護者達が…それぞれに散って行く。


立ち話する者もアリ。
帰宅を急ぐ者も…アリ。



皆、自分の子供の為に…早朝から、会場設営に協力した人達だった。




「みっちゃん、お疲れー!」



頬にピタリ、と。


よく冷えた…缶コーヒーをあてられて。


振り返ったそこには――…




早瀬くん。




「お疲れ様。」



何故彼がここにいるのかっていう疑問よりも。


この、光景に…寧ろ馴染んでいるっていう…不思議な人。




彼は、プルタブを開けて。



ぐびっと一口…コーヒーを飲んだ。


喉仏が上下に動いて、妙にサマになる、その姿を…

じっと見つめた。




「みっちゃんの子、年少だっけ。」


……不意打ち。

私は慌てて視線を反らして。

同じように、一口…口に含む。



「うん。」


「今年は…晴れて良かったね。」


「………うん。」


今年…、は?



「みっちゃんさー…。今、俺が何でここにいるんだって…思ってんでしょ?」



「………うん、まあ。」


「…俺もイチ、保護者だしね。」


「………へ?」



「紗羽ちゃんの。」


「……………。」



昔も今も、ストレートな人だなあって…思う。


間違いなく冗談なのに、真っ直ぐな想いを…織り混ぜて。


さりげなく人の心を奪ってしまう…。



「はいはい、言ってなさい。どうみても、テント設営にかり出された人って感じだったけどね。」



「なーんだ、ばれてた?」


勘もいいし、器用。


でも…、こうして、ボケに回るから――…。
突っ込み役の私は…応戦に困る。



根は…、優しいと思う。


テントを設営しながらも、周囲への気配りも…忘れない。


会話をしながら、ひょいっと重い荷物を持って上げるとか…たまに、そういう光景もあった。



でも……。



紗羽には、近づかない。




遠慮…してるのかな?


周囲の目を、気にしてる?



らしく…ないじゃない。



< 425 / 457 >

この作品をシェア

pagetop