ねえ、君にもし、もう一度会えたなら。
「紗羽ー、私、次の教科とってないから…先に帰るねー!」
紗羽にそう断って。
さっさと教室を出て行った。
昇降口を抜けた所で…、
ふと。
グラウンドに―…目が行った。
それから。
校舎を…見上げて。
両者の様子を…窺う。
「………………。」
早瀬くんは。本当に…気づいてないのだろうか。
今だって、ホラ…。
紗羽の視線は、真っ直ぐ…貴方に向いているのに。
呑気にマネージャーとイチャついてんじゃ…ないわよ。
けれども。次の瞬間に――…
その想いは、一気に覆される。
早瀬くんが、校舎の方へと…振り返って。
紗羽のいる教室を…
眩しそうに、見つめていたから――…。
「……真奈美。」
しばらくすると、彼はまた、ぐるんと正面に向きなおして。
マネージャーを…睨む。
「どこが…男と一緒だって?」
……ん?オトコ?
「アハハっ、単純~!バカめ。私を簡単に振った罰だ。」
「てめ…。図ったな…。」
早瀬くんは。タオルをブンブンと振って…、
マネージャーへと、かかっていく。
彼女は声を上げながら、さも嬉しそうに…逃げまどっていたけれど。
もれなく…、観念したかのように、おとなしくなった。
「素直に認めないからだよー?……あ、ホラ。また見てるよ?」
ナニ、この……やり取りは。
早瀬くんは、彼女がいるから……ちゃんと自制心を利かせていたんじゃあないの?
それに。
紗羽が…見ていることに。
彼女の想いに。
本当は……気づいてる……?
マネージャーに指摘された手前、もう…、隠すことが…面倒になったのだろう。
窓から目だけを覗かせている…紗羽に。
彼は……
彼女だけに分かるように、口パクで…
話しかけた。