ねえ、君にもし、もう一度会えたなら。
それは、横からでは…何て言ってるのかわからなかったけれど。
なんと可愛いことか、紗羽が、正解を復唱してくれるから。
秘密の会話は。
……駄々漏れだった。
『あ』
「……『あ』?」
『ほー』
「『ほー』?……なにソレ…、ひどい。」
最後に。
彼は、紗羽には読み取れないように。
「見てばっかいんじゃねーよ。わかってんだぞ、バーカ。」
なんて、早口で…言うから。
全てを聞いてしまった私は……
柄にもなく、ドキドキしてしまった。
紗羽はそれからすぐに、手を振って。
教室の中へと……戻って行く。
次の講習が…始まるようだ。
一方の早瀬くんは、笑顔でそれを…見送って。
それから。
「ふう……。」と、ため息をついた。
「ねえ。」
突然、降って湧いた声に、彼は…驚かない筈もなく。一瞬…、肩がビクッと跳ねたのを、私は見逃さなかった。
「みっちゃん。……何で…いるの?講習は?」
「残念ながら、選択科目だけだから…、もう下校です。」
「へー…、お疲れ。」
淡々といい放っているけれど。
彼は、私とは…目を合わせない。
「言っとくけど。早瀬くんが…言ったんだからね?」
「……は?」
「タガが外れないように見張ってて。…って。ストッパー役から言わせてもらうと、今のは…アウトかな。」
早瀬くん家に行ったとき、貴方は…私にそう言った。
「……。見てたんだ?」
「まあねー。……てか、マネージャーと…別れてたんだね。」
「うん。」
「いつ?」
「……最近。」
「それは……、この前、紗羽となんかあったから?」
「さあ……、どうだろ?」
簡単に…、手の内を見せはしないか。
紗羽といい、早瀬くんといい、基本、秘密主義…なんだから。
「……なあ、みっちゃん。今、みっちゃんがここで聞いたこと……」
「……言わないよ、紗羽には。」
「……うん。ありがとう。」
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