ねえ、君にもし、もう一度会えたなら。

「……しんちゃん……、大丈夫、もう……時効だよ。」




『……………。』




「……１０年…経ったんだよ？今、早瀬がこれを聞いたとして…、彼ならきっと、怒りもしないよ。そもそも…、私を好きとかって、有り得ないって。」



『……そうかな？』



「…うん。」



『一つでも、思い当たることは………ないの？』









ー ……。……好きだよ？ ー




ー ……え？ ー






自転車に乗っている私と。



私を見下ろす…早瀬。





ー ……好きって……、…犬？ ー



ー え。……うん、以外に何かある？ ー




「……思い当たること……？」







ー ……紗羽ちゃんの髪…、今特にサラツヤ。…好きだな。 ー




ー ………好きって…… ー



ー ……髪。以外に何かある？ ー







「……ある訳……ないよ。」






それ以外のことは……



ある訳、ない。








『もう…、過去のことなんだね。』




「…………。」




『でも、会ってみたら…そうはいかないよ？俺がいい例。』




「………ありがとう。」




『……今の…、告白のつもりだったんだけど。』



「うん、だから…ありがとう。」




『…もしかして…、俺、また振られた？』




「……しんちゃん。私ね、彼氏いるんだ。」



『………。居てもいなくても…変わらないよ。』



「でも……、しんちゃは友達だから。」




『……じゃあ…、早瀬は？』




「…………。」



『早瀬も…、俺と同じことを…言える？』



「…早瀬には会えないじゃん。」



『もしもの話だよ。もし会えたら……、どんな話をするんだろうな。』




「昔話じゃない？きっと。」




『………。もう過去のことだから、「好きだった」って…言ってもいいんじゃない？』



「………。意地悪だね、しんちゃん。」



『まあねー、ちょっと罪悪感があったから。……借りを…返してみたかったな。』





「……。若気の至り。みんな…きっとそうだった。もう、いいんだよ。思いでとして……ちゃんと残ってるから。楽しかったって……振り返れるんだから。」