ねえ、君にもし、もう一度会えたなら。
幼稚園の…職員室。
客人へのお茶出しは…
新人の役目。
「……あ。」
お茶を出した瞬間に、お客さんは小さく…声を上げた。
「……稲守…。」
「…え?…あ。…先生っ?」
思いがけぬ……
再会。
高校時代、担任だった……
矢代先生だった。
「お前がここに勤めたとは聞いてはいたけど…会うのは久々だなあ。」
「お久しぶりです!」
「お前~ちっとも変わんねーな。いま何歳になった?」
「29です。」
「……29?!もうそんなになるのか!」
そう言う矢代先生の髪には…
白髪がちょっと増えている。
「先生、どうしてここに?」
「ああ。秋口に、インターシップ予定しててな。3人生徒がお世話になるから…その打ち合わせに。」
「インターシップ?」
「………。ああ、そっか。お前ら特進にはなかったな。職業研修みたいなもんだよ。普通科の家庭科のカリキュラムにあるんだ。俺、今2年の学年主任しててな…、色んな企業にこうして顔出してる。」
「……。」
学年主任………。
矢代先生、偉くなったんだな…。
私が勤める幼稚園は…、
高校に隣接していて、
母校は実は…、目と鼻の先。
同じ学園の…幼稚園。
時々、懐かしい先生方に外で出くわすことはあるけど……。
矢代先生とは、初めてだった。
「懐かしーな。4月くらいに恒生とは偶然会ったけど…お前ら今でもつるんでんの?」
「………。…いや、みんな意外とバラバラで…。でも、同窓会しようって、最近恒生さん達と企画立てたんです。」
「同窓会!いいねぇ。誰が幹事すんの?」
「しんちゃんと、恒生さんと、みっちゃんと私の4人です。」
「…………。…あれ、真哉と美那子の組み合わせは大丈夫なの?」
「………。先生、知ってたんですか?」
「生徒の恋沙汰なんてお見通しなんだよ。女の先生は特に目ざといからなー…。職員室での会話聞いてると、丸わかり。」
「うわー…そうなんですね。」
「教師だって人間だぞ。干渉する訳じゃないから、そんくらい許せ。……ってか…、お前も同じ立場だから、よ~く分かるだろ?ここの先生方はほんっとよくしゃべるもんな。」