ねえ、君にもし、もう一度会えたなら。
「…料理、回して~。」
「生追加します、飲む人~!?」
「カンパリソーダとモスコミュールと…レゲェパンチお願いしまーす!あ、あとジントニック!ファジーネーブルも!」
時間制限は…3時間。
飲み放題。
幹事の私は、あっちこっち忙しく…動き回る。
「紗羽ぁ~、少しは落ち着いてはなそーよ。」
当時はギャルだったコにガッチリと腕を掴まれて。
私は彼女の隣りに…座らされる。
「利央こそ、落ち着いたよね~。」
色を抜いて傷みまくった髪が…
今では落ち着いたサラサラ黒髪ヘアー。
下睫毛にまでバッチリついていたマスカラも、アイラインも、ない。
「どーゆー意味よ~。」
彼女はぶうっと膨れっつらする。
「あとで証拠写真みせてあげる♪」
「はあ?何だそれぇ~!」
鼻の下伸ばして化粧している写真……。
きっと、利央に限らず…
みんなその存在すら忘れてるんだろうな。
「ねえねえ、紗羽、今日アイツは来ないの?」
「アイツ?」
「早瀬だよ、早瀬っ。」
「………。ああ……、うん。来ない。」
「マジか!イベントごとは欠かさない奴なのに…忙しいのかぁ?」
「……………。」
「早瀬って言えば…。あんた覚えてる?」
「え?」
「あいつが引っ越す時……。」
「……うん。」
「すっげー大所帯で行ったから…お母さんビックリしてた。」
「……………。」
「当の本人はいないし。」
「……うん。」
覚えてるよ。
驚くくらいアッサリ…
行ってしまった。
涙ひとつ見せなくて。
いつもと同じ笑顔を…
ホームに置いて。