ねえ、君にもし、もう一度会えたなら。






「…料理、回して~。」



「生追加します、飲む人~!?」



「カンパリソーダとモスコミュールと…レゲェパンチお願いしまーす!あ、あとジントニック!ファジーネーブルも!」





時間制限は…3時間。


飲み放題。



幹事の私は、あっちこっち忙しく…動き回る。





「紗羽ぁ~、少しは落ち着いてはなそーよ。」


当時はギャルだったコにガッチリと腕を掴まれて。


私は彼女の隣りに…座らされる。



「利央こそ、落ち着いたよね~。」



色を抜いて傷みまくった髪が…

今では落ち着いたサラサラ黒髪ヘアー。



下睫毛にまでバッチリついていたマスカラも、アイラインも、ない。


「どーゆー意味よ~。」


彼女はぶうっと膨れっつらする。



「あとで証拠写真みせてあげる♪」



「はあ?何だそれぇ~!」







鼻の下伸ばして化粧している写真……。



きっと、利央に限らず…

みんなその存在すら忘れてるんだろうな。







「ねえねえ、紗羽、今日アイツは来ないの?」



「アイツ?」


「早瀬だよ、早瀬っ。」





「………。ああ……、うん。来ない。」



「マジか!イベントごとは欠かさない奴なのに…忙しいのかぁ?」




「……………。」




「早瀬って言えば…。あんた覚えてる?」




「え?」




「あいつが引っ越す時……。」




「……うん。」



「すっげー大所帯で行ったから…お母さんビックリしてた。」



「……………。」



「当の本人はいないし。」


「……うん。」








覚えてるよ。



驚くくらいアッサリ…



行ってしまった。





涙ひとつ見せなくて。


いつもと同じ笑顔を…




ホームに置いて。





< 89 / 457 >

この作品をシェア

pagetop