ねえ、君にもし、もう一度会えたなら。



ホームへの入場券を手に、


改札を抜けて…


階段を駆け上がる。






下りてきた2番ホームには、しんちゃんらクラスメイト達が…早瀬を取り囲んで待っていた。





「……遅いじゃん。」


声を掛けづらくて、みんなの輪の外にいる私に気づいた早瀬が…、声を掛けてきた。


それから、



にっこりと…笑う。



「…ごめ…」


「アンタ人のこと言えないでしょ!来たばっかりのくせに。何してたのよ。」


私の声に被せて。



利央が……早瀬に問い詰める。



「……アイス食べてた。」



「……は?」



一同……ポカンとする。




「……だから、……アイス。」




まだ、肌寒いのに…アイスって!




でも……


さっきのは、やっぱり早瀬だったのかな。



彼らしい…、かもね。




「……。自転車がなくて……、走って来たよ。間に合って…良かった。」



彼は…こくりと頷く。







『まもなく…2番線に……』



駅構内には…アナウンスが流れ、




その声に……


みんなは、次々と別れの言葉を告げた。




中には泣き出す女子もいたりして……




「泣くなよー。また会えるし。」


困った顔して…その子らを宥めていた。







ガタンガタン……

ガタン…ガタン……





「………会えて…良かった。」




新幹線が到着する音に…



私の、そんな小さな声は…


掻き消された。













新幹線の…扉が開く。









早瀬のお母さんは、何度も頭を下げて…


先に中へと入って行った。




早瀬は、一度振り返り……




「じゃ…、元気で!」




別れを惜しむみんなに、拍子抜けしちゃうくらいの悪戯っぽい笑顔を…見せ付けた。








「……紗羽ちゃん。」




「……え………?」




「…『会えて…良かった』。」













発車のベルが鳴って。



ドアの向こう側に……





早瀬は行ってしまう。









……聞こえて…いたの?






そんな疑問も、もう…聞けるはずもなく。




動き始めた電車の窓越しに……



口角をキュッと上げて。


でも……


どこか、寂しいそうに笑う君の横顔が…見えた。











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