ねえ、君にもし、もう一度会えたなら。
「最後にさあ…、早瀬、紗羽に何か言っじゃん?何で紗羽にだけ?って思ってたんだけど…、アンタあの時泣きそうな顔してたから…聞けなかった。」
「泣きそうだった?」
「うん。」
「自分ではわからなかったな……。」
「……ふ~ん。……紗羽、アンタもう少し飲めば?さっきから呑んでる気配ないじゃない。」
「…だって、幹事だし……」
「同級生に気を遣ってどうすんのよ!勝手にやるから大丈夫だっての。つーか、昔っから割と周りに遠慮するよね、紗羽って。よく人を見て判断してる感じ。」
「そういう利央は遠慮ないよね。……いい勘してて、たま~に爆弾落とす。」
「………。言えんじゃん、言いたいこと。」
「オンナ社会に揉まれてますから~、10年経てば強くもなるよ。」
「………。なる程…。じゃあ…、飲め!どうせ飲めるんだろ?」
「…飲めるけど……」
「飲んで、酔っ払って、訳わかんなくなって……。そしたら出るのが…本心だから。」
「……………。…何を言わそうとしてるの?」
「10年前に聞けなかったコト。」
「…………。……何…?」
「アンタって…早瀬んとこ好きだったんじゃないの?」
「………。…ほらぁ、投下してきた。」
「聞きたいじゃん?」
「…………。……好き…だったのかもね、多分。自分でも気づかなかったくらいに…かなり、こっそり…片想い?」
「…………。」
「……今にして考えると、そうだったのかなあって。」
「………………。」
「…とっくに時効。今だから言える…笑い話だね。」
「…………。そう…。…時効とは…思えないけどね。」
「……え?」
「あ、そこのオニーサン、酒の注文お願いします!雅山〇「極〇」グラスで。」
「……!日本酒っ?!」
「旨いんだって、これが!呑んで吐き出して…スッキリすればいーよ。」
「……。利央…。」
彼女は手元にあるサワーを飲み干して。
「……会えるといーね。」
そう言って……
笑った。