【BL】初恋いただきます。
「寒かったろ?」
頬に触れた要さんの手は、走ったからなのか暖かかった。
「平気だよ。」
「嘘つくな。ったく、風邪でも引いたらどうすんだ。」
「大丈夫だって。」
肩を竦めて笑えば、俺が嫌なんだと要さんは言った。
「遅くなって悪かったな。早く入るぞ。」
俺は、要さんの後ろについて中に入る。
そこは少し高級感が漂うレストラン。
引き取られた日、初めて連れてこられた店。
忘れられない、思い出の場所だ。
すぐにウエイターがやってくる。
「予約していた櫻井だ。」
「櫻井様ですね。お待ちしておりました。さあ、奥へ。」
ウエイターの案内で店の一番奥の席へ座る。
この席も毎年決まっている。
「すぐに御料理をお持ちしても?」
「ああ」
かしこまりました、とウエイターは一礼をして厨房へと消えていった。