【BL】初恋いただきます。
車の揺れは俺を深い眠りに誘ったようで、要さんに起こされるまで熟睡してしまった。
「涼、着いたぞ。起きれるか?」
「ん、ありがとう。ごめん、すっかり寝てた…」
「別に構わない。」
要さんが車から降りたのに習って、俺も続いて車から降りる。
エントランスまでの距離、要さんは当然のように俺の手を握った。
「要さん、誰かに見られたらまずいよ……」
「別にいいだろ。」
「て言うかこの距離なら手繋ぐ必要ないんじゃ…」
「ダメだ。」
断固として要さんは手を離す気はないらしい。
こういう我儘なとこは変わってないんだなぁ…。
なんて思いながら手を引く要さんの横顔を見つめた。
大人……だよなぁ。
どんなに我が儘言っていても、やっぱり大人。
悔しいけれど、俺よりも全然大人なんだ。
「……なんだ?人の横顔眺めて」
怪訝そうな顔で要さんが俺を見た。
「いや、なんか大人だなって」
「なんだ、急に……相当疲れてるみたいだな。」
まるで呆れたように要さんは言った。
エレベーターに乗り込んでも手は離れない。
扉が閉じると、エレベーターは上昇を始め、
あっという間に目的の階に着く。
結局部屋に入るまで、要さんの手が離れることはなかった。