【BL】初恋いただきます。


「涼、見てみろ、この輝きを。」


まるで宝石を見たような感想を述べる要さんの手には、箸が握られている。
その先には確かに光輝く………お刺身。


「涼、聞いてるのか?」
「……聞いてるよ。大袈裟なんだから……笑われるよ。」
「仕方ないだろう。本当にそう思っているんだから。いただきます。」
「いただきます。」


北海道での最初の食事は、やっぱり海鮮丼。
これは外せないよね!


「んー、旨い!」


口に入れた瞬間、脂が溶けていくみたい。
思わず感嘆の声を上げてしまった。


「要さん、旨いよ!」


要さんは小さく笑って、そうだなと応えた。


「なんで笑うんだよ……」
「いや、さっきまでの大人振った態度とは180°違うなって思ってな。」
「だって旨いんだもん…」
「あとは、」

要さんは一度言葉を止めて、優しく笑んだ。


「喜んでくれて良かったって思ったんだよ。お前が笑ってくれることが、俺の一番の喜びだから。」



優しく微笑んで、


「なっ……だから、そういうことを……」


そんなことをさらっと言えてしまうんだから、


「真っ赤だな。何を恥ずかしがっているんだ?」



いつも要さんに振り回されてしまうんだ。



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