風の吹かない屋上で
不意に訪れた屋上で
俺だってたまに一人になりたい時がある。
友達と一緒にいるのは嫌いじゃないけれど、ずっと一緒にいるのは苦しくて逃げ出してしまいたくなる。
かといって独りは寂しいし嫌だ。
結局のところ俺も、あれは嫌だこれも嫌だとゴネるワガママなお子様なんだろう。
「だからって便所飯は孤独だよなぁ」
もうトイレで食事をするのは飽きた。せっかく母さんが作ってくれた弁当がまずくなる。
だからといって他に一人になれる場所があるわけがなくて、吐きそうなくらい人で密集した教室で、一日中一緒にいる友達と弁当を食べるのを想像したらここが最適なのだ。
便座に座って膝の上に広げた彩豊かな弁当からきつね色の卵焼きを箸でつまみ、口の中に押し込んだ。
甘党な俺の好みを理解してくれている母さんはいつもとびきり甘い卵焼きを弁当にいれてくれる。
もうずいぶん便所飯にも慣れた。
昼飯は学食で食べると友達に言い、誰もこないトイレの個室でこうして弁当を食べる。教室に戻った時に「俺たちも食堂だったけどお前どこにいたの?」って言われても「えー、俺いたよ。人多かったし分からなかったんじゃねーの」って言っておけばいいのだ。
生徒数が多いくせに小さい食堂はいつも混んでるし、そんな言い訳は充分通用する。
「でも……」
便所飯はもう辛くなってきた。
やっぱり俺もまだまだ、あれは嫌だこれも嫌だとゴネるワガママなお子様なんだろう。