闇龍~最強の女~
誰もなにもしゃべらない。

ただただ、この景色に魅入っていた。

波の音だけが、聞こえていた。



どれくらいそうしていただろう。

静寂だったこの空間に

美「…ここはね」

美海の声が響いた。

美「…お父さんとお母さんが、

  出会った場所なんだって」

ポツリポツリと。

懐かしむように、美海は言葉を紡ぐ。

美「2人とも、この海にきたとき…

  出来心から、探検してたんだって。

  お母さんが最初にここにきて、

  そのあと、お父さんが入ってきて…。

  お互いに一目惚れしたんだって」

話しているのは俺たちなのに、

美海は、どこか遠い所を

見ているような気がした。

美「お父さんたちは夏になるとね、

  よく私をここに連れてきてくれた。

  すごいときは、一年で10回とかね。

  でも、私はここに来るのが毎回

  …楽しみだった」

 
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