素敵な恋がしたい
「ちー!」
振り向くとそこには、昨日喧嘩したばかりの優ちゃんが無邪気な笑顔を私に見せていた。
「ちーって呼ばないで!昨日は優ちゃんが悪いんだから!」喧嘩の原因は向かいに住む男の子、優ちゃんが私と友達、唯の交換ノートを見てしまったから。優ちゃんがわざと見たわけじゃないとわかっているけど、謝ってくれない優ちゃんと大喧嘩中。
「ちーだって優ちゃんっていってるじゃん。」
あぁ…やってしまった。
「分かった。じゃあ今日から大島君って呼ぶから!」
「すみませんでした!許してください。もう見ません。」
「もう見ないでね!絶対!」
大島優汰、…私の好きな人、元。優ちゃんにはその時付き合っていた人がいたから。簡単に手放した。淡い淡い初恋を…。

長い長い通学路を歩き終え、下駄箱をゆっくりと開ける。そこには一通の手紙。ー好きですー、とだけ一言。名前も書かれていない。
「ふーん、慣れてる奴はラブレターを貰っても驚かないんだぁ…」
優ちゃんは覗き込み、からかうように言った。……所詮男子なんか外見しか見ていない。中身を見てくれる人なんかいないんだから…。

ー入学式

呼名が始まり、ゆっくりと私の番が近づく。
「南野千菜美」
大きく息を吸い、
「はい」
と返事をした。

「千菜美!!」
唯が何やら手紙のような物を手に持ち、私に向かって手を振っていた。
「唯一、それ何?」
「またもらっちゃった!ラブレター!」
唯はこの通り男の子にモテる。それは本人も自覚しており、モテたくてモテていると、言ってた。私も何もしなくてモテている訳ではないけど。
「あんまり私以外の女の子に見せちゃダメだよ~。唯モテるからすぐひがまれちゃうんだから。」
「わかってる!同じモテ仲間としての情報交換でしょ?さあ千菜美も!なんかあんでしょ!告られた、とか。」
「………ないよなんも。実際唯よりは全然モテないし。」
あの手紙のことは、言わなくていいよね………。名前だって知らないし……。
「ちー、朝なんか手紙入ってたよねー。」
そう言ったのは案の定優ちゃん。
「やっぱり!千菜美がないわけないもん。あ、やば!先生来たよ!」
ガラガラ…
担任の先生は、30代くらいの女の先生。
「初めまして、一組担任の桜井ひかりです。教科は、体育です。皆さん宜しくお願いします!」
体育…。桜井先生は美術のイメージがあるような優しそうな顔立ちで体育にはいくら連想の鎖をつなげても、届かない。でもいい人そう。

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