魅惑の果実
あれから一時間程経ち、何本シャンパンが空いたか分からない。


くっそぉ……酔っ払った。


でも今ここで完璧な酔っ払いになったら、ずんぐりむっくり春馬にヤられる。


愛がないエッチがダメだとは思わないし、行きずりのエッチも本人同士が納得してるんだったら全然アリだと思う。


でもこの人とは絶対無理。


手を握るだけで精一杯。


唇と唇が触れ合おうもんなら、胃の中がいっきに空っぽになりそう。



「おう、そろそろ帰るか」

「そうっすね」



やっと帰る。


内心の喜びを顔に出さない様頑張った。


お会計を済ませ、私たちキャストも客を見送る為席を立った。


下へ行くエレベーターが止まり、乗り込もうとしたら、春馬さんに腕を掴まれた。



「お前は先に行ってろ」

「はい、分かりやした」



あの人あんなに酔っ払って大丈夫かね?


まぁ、お姉さんが支えてあげてたし大丈夫か。



「おい、莉乃」

「何ですか?」

「俺の女になれ」



……はい?


ふざけてんの?


こんなのと付き合うくらいなら、一生独り身でいいんだけど。



「欲しいもんは何でも買ってやる」



そのお金で是非整形して下さい。



「あっ、エレベーター来ましたよ」



酔っ払いすぎて頭が回らなくて、上手い言い回しも思い浮かばない。





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