魅惑の果実
よくわかんないけど、助かったんだよね?


はぁ……良かった。


あっ!


お礼っ!!


振り返るとそこにはスーツを綺麗に着こなした、黒髪を後ろに流し、整った顔立ちをした男性が立っていた。


背も高くて、思わず見上げてしまう。


ダメダメ!!


私は一歩後ろに下がり、頭を下げた。



「ありが……」

「あの程度の男をあしらえないのなら、そんな仕事辞めてしまえ」



ん?


お礼の言葉を遮られた上、まさかの厳しい一言に耳を疑った。


顔を上げ桐生さんの顔を見ると、彼は真っ直ぐ私を見下ろしていた。


冷たく射る様な視線に身体が強張り、何もいう事が出来なかった。


桐生さんは私に背を向け歩き始めた。


後ろ姿を呆然と見つめていたが、姿が見えなくなりハッとした。


何なのあの人!?


走って追いかけると、桐生さんは黒塗りの高級車に乗り込み行ってしまった。


いい人かと思いきやあの態度!!


こっちの事情も知らないくせに勝手な事言っちゃってさ!!


感じわる。


もう会う事もないだろうし、さっさと忘れよ〜っと。





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