魅惑の果実
第七話 関係
目の前に桐生さんがいる。


こうして桐生さんとプライベートで会えるのは、これが最後になるかもしれない。



「ずっと居たのか?」

「あ、えと……うん……」

「電話をすれば良かっただろう」

「……電話じゃなくて、あいたかったから……迷惑なのは分かってる。 ごめんなさい……」

「行くぞ」



桐生さんはクルッと背中を向けると、マンションのエントランスに向かって歩き始めた。


私もついていっていいのかな?


いいんだよね?


グッと手を握り、小走りで桐生さんの後を追った。


エレベーターの中では会話はなく、部屋までの本の僅かな時間が凄く長く感じられた。


怒ってるのかな?


友達でも彼女でもない相手に待ち伏せされて、いい気持ちにはならないよね。


ちゃんと話がしたいと思ってここに来たけど、既に心が折れてしまいそうだった。


二度目の桐生さんの部屋。


まだ落ち着かない。



「適当に座れ」



私はソファーに腰掛けた。


大きくて座り心地のいい高級感漂うソファー。


桐生さんが座ると様になる。






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