魅惑の果実
恋愛もそうだけど、夏休みも終わって大学受験にも本腰をいれなきゃいけない。


父親にも話をしないといけないし……憂鬱。



「明日香は大学決まってんの?」

「決まってるよぉ。 私はお姉ちゃんみたいに頭がいいわけじゃないから、レベルの高いところを受ける気はないんだよね。 そういえば美月は?」

「私は音大受けようと思ってる」

「音大!? ビックリなんだけど!」



明日香には何も話してなかった。


っというか、進学の事について知ってるのは担任くらい。



「音楽の先生になりたいんだよね」

「美月が先生!? あははっ」

「そんなに笑わなくてもいいじゃん! 言わなきゃよかった」

「あははっ、ごめんごめん! 意外だなって思ったからさ。 まぁ、でも、なんだかんだ面倒見いいし、向いてるんじゃない? ってか、ピアノとかできんの?」

「ピアノは物心ついた頃から中学までやってたから、そろそろ触ろうかなって思ってる」



私が曲を覚える度、お母さんは喜んでくれた。


今思えば凄く単純で簡単な曲。


それでも早くお母さんに聞かせたくて、一生懸命練習した。





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