魅惑の果実
媚売られるって事は、実は凄い人なのかな?


でも私とたいして歳は変わらない気がする。


不思議な人。


空になったグラスをテーブルの上に置きに行くと、知っている顔がVIP席のフロアを歩いているのが見えた。


あれ?


美羽(みう)?


まさかね……。


真面目な妹がこんなところにいるはずないよね。


それに二十歳以上じゃないとここのクラブは普通は入れない。


まだ十六歳の美羽が入れるわけない。


私たちみたいに知り合いがいて入れてもらったとか?


いやいやいや、真面目な美羽にそんな知り合いがいるとは思えない。


他人の空似だと思うのに、何でこんなに胸騒ぎがするんだろう。


確かめたい。


気付けばVIP席に向かっていた。



「どちらのお客様のお席ですか?」



VIP席の入り口でセキュリティーの男性に止められた。


どちらのって……どうしよう……。


そんな人居ないよ……。



「美月!」



翔に腕を掴まれハッとなった。



「探したよ。 こんなところで何してるの?」

「ちょっと確かめたい事があって……」






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