魅惑の果実
翔がニコッと笑った。


え……嫌な感じがする。



「今度デートしてくれる?」

「……は?」



今それどころじゃないんだけど……。



「今度デートしてくれるなら、助けるよ」

「助けるって……翔がどうにか出来るとは思えないんだけど」

「じゃぁん」



翔がズボンのポケットから真っ黒のカードを取り出した。


何のカード?



「これがあればVIPに入れるよ」

「え!?」



何で翔がそんなの持ってんの!?


今はそんな事どうでもいい!!



「中に入れて!!」

「デートは?」



この笑顔、今はムカつく。


小憎たらしくみえる。



「デートでも何でもするよ!!」

「じゃ、連絡先教えて?」

「ゼロハチゼ……」

「ちょっ、ま、待ってよ!!」



慌てる翔の事なんてお構いなく電話番号を口にした。


こっちは急いでるんだっつーの。



「鳴らすね」



ーブーブーブー……。


鞄の中のケータイを見ると、知らない番号が表示されていた。



「登録しておいてね」

「はいはい。 もう、いいから早く!!」



翔がカードを見せると、すんなり通してもらえた。





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