魅惑の果実
「昨日はどうだったの?」



明日香の一言で、忘れていた最悪な出来事が蘇ってきた。


今思い出しただけでもムカつく。



「ちょっと、ちょっとぉー。 朝からそんな怖い顔やぁめぇてぇ〜」



お箸へし折りそうそうなくらい手に力が篭る。


ずんぐりむっくりもムカつくけど、それ以上にあの桐生さんって人の方がムカつく。


何なの?


あの鼻持ちならない感じ。



「実はさ……」



私は昨日あった出来事を事細かに話した。


明日香は「うぇっ」とか「おぉー」とか、声を漏らしながら聞いていた。



「でもさぁ、その桐生さんって人が声かけてくれなかったら実際ヤバかったんでしょ?」

「いやぁ……うん、まぁ……」



あの馬鹿力は私の力じゃどうにも出来なかったと思う。


間違いなくキスされてた。


助けてもらったのは確かなんだけど、素直に感謝できないのはあの人のあの態度の所為だ。



「桐生さんって良い人だったんじゃん?」

「はぁ!? 何処が!?」

「助けてくれた上に、初対面でそんな事言ってくれる人いなくない? それにイケメンだったんでしょ? 悪い人な訳ないってぇ〜」



イケメンは関係なくない!?


明日香は兎に角面食いだからなぁ……。





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