魅惑の果実
「いいよ？ 無理に話さなくてもさ」

「無理はしてないよ。 私が聞いてほしかったから話しただけ」

「そう？ ならじゃんじゃんどうぞぉ」



明るい声。


明日香のこの優しさが好き。


つい甘えてしまう。



「父親の事は軽蔑してる。 義母なんて大っ嫌い。 でも、私のことを捨てて一人で出て行ったお母さんはもっと嫌い」



嫌い……だけど会いたい。


矛盾する気持ち。


この気持ちがどうすれば落ち着くのか、分からない。



「美羽ちゃんは？」

「……よく分かんない。 でも、ついキツク当たっちゃう。 美羽には悪いと思ってる」

「美羽ちゃんは美月の事大好きだと思うよ？」

「あははっ、そんなわけないじゃん！ 嫌われるような事はしても、好かれる様なことはしてないよ」

「美月ってばほぉんと、鈍チンだねぇ。 まぁ、少しずつ良い方に変わっていけばいいんじゃん？」



明日香のお気楽な言葉と意味深な言葉は、何故だかスーッと胸に入ってきた。


私もこのくらい気楽でいたほうがいいのかも。


このままだと悩み過ぎて禿げそう。






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