魅惑の果実
何を妄想してるのかは知らないけど、明日香は何故かにやけ顔。


桐生さんのあの目……あんな冷たい目をした人初めて……。


正直内心めっちゃビビってた。



「きゃぁ〜完璧すぎるぅ〜っ!!」

「急に何!?」

「だって“桐生様”って呼ばれてて、黒塗りの高級車に乗ってたんでしょ!? 顔もスタイルも良くて、おまけにお金持ちぃ〜!! なんちゅーいい物件!!」

「でもあの感じだと、絶対性格に難ありだね」

「そんだけいい条件が揃ってんなら、そんくらい我慢するするぅ〜」



呆れた。


今だけでも明日香の脳みそ借りたいよ。


まだニヤニヤしてるし……。



「妄想すんのは勝手だけど、そろそろ準備しないと遅刻だよ」

「げっ! ヤッバ!!」

「食器は片しとくから準備しちゃいなよ」

「ごめん! ありがとっ!!」



明日香がドタバタと準備をしている間、私は食器を洗って歯磨きをした。


唇に淡いピンク色のリップグロスを塗り、唇に馴染ませた。



「おっ待ったせぇ〜!! 行こっ」



朝から元気のいい明日香と、いつもの様に寮を後にした。





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