魅惑の果実
あれから日にちは経ち、学校は夏休みに入っていた。


明日香は夏休みの間は家に帰っていて、私は寮の部屋に一人残っている。


夜働いてる事言ってないし、そうじゃなくても家には居たくないし……寮に一人でいる方が気が楽。


それにしても、あれから一度も桐生さんには見事に会わない。


別に会いたいわけじゃないけど……ちゃんとお礼も言えてないし……助けてもらった事には変わりないんだから、人としてお礼は言うべきだと思っただけ。


ただそれだけ。


あの人の目がどうしても忘れられないんだよね……それにあの声……。


心地よさと、ゾクッとするくらい色気のある声。


桐生さんを見かけないのもそうだけど、ずんぐりむっくり春馬もお店に来なくなったな。


桐生さんに怯えてたみたいだし、来なくなった原因は桐生さんかな?


だとしたら桐生さんって一体何者??


あの輩があそこまでビビるって、ただ者じゃないよね。


雰囲気は怖かったけど、桐生さん自体輩っぽくはなかったしなぁー……。



「って、ヤバ!!」



時計を見て慌ててソファーから飛び起きた。


早く準備しなきゃお店に遅刻しちゃう!!





< 17 / 423 >

この作品をシェア

pagetop