魅惑の果実
サッカーのユニフォームを着た人たちは近くの空いている席に座り始めた。



「健人」

「西條の追っかけ?」



その人は隣に座ると笑ってそう言った。


口ぶり的に健人の追っかけをしている女の子は多いんだろうなと思った。



「違うから。 友達」

「そうなんだ。 西條に女友達って珍しいかも」

「そうなの?」

「あいつが女と関わってるところって滅多に見ないっつーか、聞かないっつーか……まぁ、女友達を見たのは初めて」



そうなんだ。


軽そうには見えないから、女の子に言い寄られてもむやみやたらと手を出したりはしてないんだろうな。


話してる感じでは女が苦手って感じではなかったし、誠実な人なのかも。



「俺を見捨てて他の男と楽しくお喋り?」



ドカッと隣に座った翔の笑顔は純粋な笑顔じゃなかった。


怒ってる……。



「御堂の彼女?」

「そ! だから手ぇ出さないでよね」

「翔の彼女になった覚えない」

「あはは、彼女じゃないんじゃん。 じゃあ俺にもチャンスはある……」

「彼氏いるから、他の男に興味ない」



男の言葉を遮り言い切ると、私たちの周りだけシーンとなった。





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