魅惑の果実
てか、まだ?


かれこれ三十分経つんですけど……。


いい加減のぼせそう。


体もふやけてきてるような気がする。


駄目だ。


もう限界。


クラクラする。


なるべく音を立てないように立ち上がり、ゆっくり静かに脱衣所に出た。


目眩がしてすっぽんぽんのままその場にしゃがみ込む。


とりあえず体拭かなきゃ冷えちゃう。


でもまだ動きたくないな……。


もう……桐生さんってばいったい何なの?


もしかして私の存在忘れてる?


いやいや、そんなわけないよね。


はぁ……ちょっとマシになったかな。


私はゆっくり立ち上がり、体を軽く拭いてバスローブを着た。


今では着慣れたバスローブだけど、まさか自分がバスローブを着る事になるなんてこのお家に来るまで思ってもいなかった。


相変わらずの違和感。


桐生さんが着てると様になってるんだけどなぁ。


髪の毛をわしゃわしゃ拭いていると、ガチャっという音が聞こえた。


顔を上げるとそこには見知らぬ女性が……。


え……誰?





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